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【テニス映画レビュー】ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男【BORG McENROE】

テニスを題材とした映画って数少ないですけど、2017年に公開された、ボルグとマッケンローの死闘を描いたこの作品は、テニス愛好家だけでなく、多くの人に見てもらいたい映画です。特に、テニスをやる人は、テニスがいかに特別なスポーツであるのか、その魅力と世界を知るために是非見てほしい映画です。

作品概要

この作品は、2017年スェーデン、デンマーク、フィンランド合作の映画です。ヤヌス・メッツ監督、ロニー・サンダールの脚本で作成されました。キャストは、ボルグ役にスヴェリル・グドナソン、マッケンロー役にシャイア・ラブーフを適用。ボルグの13歳までの役は、息子のレオ・ボルグが演じています。

作品の舞台

映画の主な舞台は、1980年のイギリス、ウィンブルドン(全英オープンテニス大会)です。今でも伝説の死闘と語り継がれる男子シングルス決勝戦で、スウェーデンのビョン・ボルグとアメリカのジョン・マッケンローが3時間55分に及ぶ死闘を繰り広げました。映画では、この試合までの二人のそれぞれの道のりと心理を深く描写しています。

ふたりの性格

ボルグは、常に冷静に機械のようなプレーをする、クールで完璧な貴公子プレーヤーとして知られていました。対するマッケンローは、ボルグのように冷静になりたいのになれない、紳士のスポーツを汚すマナー違反ばかりする、手におえないアメリカ人として、観客からブーイングを受ける存在でした。そんな二人の格闘技のようなファイナルの時間までの、様々な心理とその勝利の瞬間までの時が見事に描かれています。

見どころ満載

ボルグの異常なまでの冷静さと目の奥にある深い悲しみのバックグラウンドを描いています。ボルグの勝利を支えていた、変化を嫌う行動習性や、彼を支え続けた婚約者との関係性もしっかりと伝わります。ボルグがウィンブルドンで連覇を始める前は、まるでマッケンローのように、わがままで、感情を抑えられず、コートにラケットを投げつける暴れん坊だったのです。映画の邦題の通り、誰もがボルグを氷の男、マッケンローを炎の男と考えていました。でも、実はボルグの内面でも、火山が噴火し、その噴火を力づくで押さえつけて、5連覇を勝ち取った軌跡が、痛々しいほどの迫力で表現されています。

映画の中の、ウッドラケットや、足の滑らせ方、サーブの前のルーティン、レシーブの時の体のゆすり方、当時のウェア、勝利の瞬間にひざまづいて勝利の喜びを噛みしめるボルグの姿や、ボールに飛びついて倒れたマッケンローの映像は、私を1980年に連れ戻してくれました。

ファイナルの試合の中で

私たちも生中継で共有することができたファイナルの「3時間55分の時」の中で、ふたりは互いに相手の中に自分と同じものをみつけたのでしょう。だから、完全に相手を理解したのではないでしょうか。この試合の後、ふたりは親友になったそうです。試合の後に親友になれるなんて、やっぱりスポーツってすごいと思います。ボルグは内側に押し込んだ感情を外に出さないようにしていたけれど、マッケンローにはお見通しだったのですね。マッケンローは、この決勝戦では、ミスジャッジがあっても暴言を吐きませんでした。最高の極みに達したふたりのシンクロがそうさせたのかもしれませんね。

この映画が伝えたいこと

心理的に興味深かったのは、実は根本的に似た二人が氷と炎になった理由です。この二人の心理をえぐるように、描いてくれたことで、あの試合の素晴らしさが何倍にも膨れ上がりました。自分の心の底にある気持ちを抑えつけたボルグの悲しみ。勝利のための完璧な強さの裏の悲しみは、より深いものだったと思います。
対するマッケンローの心の奥にも怒りを生み続ける深い悲しみがありました。いくら頑張ってもより高みを目指せと、彼を受け入れない親の愛を求める子どもの心は悲しみであふれていたのですね。ドロー表を試合中滞在していたホテルの部屋の壁にマジックで書き出し、優勝への意欲を燃やすシーンは痛々しく、悲しかったです。
ファイナル前にも、何度かボルグは自分の今までの道のりが正しかったかを確認しようとしますが、なかなか確信を持てませんでした。気持ちを抑え始めた頃のシーンがフラッシュバックし、ついに試合直前に自分の今までの時間を肯定することを決めました。その時、孤高の自己との戦いを制し、5連覇を手に入れたのだと思います。

コーチの存在

勝つためのコーチの存在の大きさもしっかりと映画の中に描写されています。ボルグの全ての怒りは、彼の才能を見出し、育てあげたコーチによって、試合中にぶち切れない約束とともに内面に抑え込まれました。圧力釜のようにフタをしろと教え込まれ、一打一打に怒りを込めて打てと言われ続け、あの冷静な、何があっても動じないボルグマシンができあがったのでした。心の歪みは、吐くという行為でバランスを取っていたということも知り、見ていて苦しくなりました。気持ちの解放のコントロール方法ではなく、抑え込むことを余儀なくされたのですから。今も当時も、コーチは選手のメンタルを方向付ける大きな鍵を握る存在だということがわかりますね。もちろん、映画の中でもコーチとボルグの魂と魂のぶつかり合いが熱く描かれています。

まとめ

最後になりますが、頂点を極めた高レベルでの声なき対話を表現してくださった、制作関係者の方々に感謝します。と共に、このセンシティブな内容を公開する決意をして下さったおふたりと、ご家族にも心からの敬意を評します。この映画は、いろいろな面で心に響く場面がたくさんあります。テニスをされない方でも、第4セットの18-16のタイブレークシーンはハラハラドキドキすること間違いなしです。ぜひ一度ご覧になってくださいね。

ボルグが勝ち取った5連覇は、2019年現在までフェデラーに並ばれこそしましたが、破られてはいません。この試合の翌年1981年のウィンブルドンではマッケンローが勝ち、その年ボルグは引退します。
ここまでのドラマ性はなくても、各大会、各試合に、公にされていないエピソードがあるのでしょう。自分に勝ったものが相手を制するのは、どのスポーツでも見られるかもしれませんが、テニスの大きな大会のファイナルほど強靭なメンタルを要求されるスポーツは少ないでしょう。だからこその深さがファンを魅了し続けるのですね。


是非、お勧めの映画ですので、一度見てみてください。

松岡修造さんのトークイベント

映画について、ボルグマッケンローについてまだよく分からない、といった方に、松岡修造さんのトークイベントの様子をご紹介します。 松岡修造さんの自由っぷりが面白いですが、きちんと熱いメッセージもあり、映画の魅力もさらに伝わり、一見の価値があります。

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